くない以前の歴史的背景

くないの用途としてビジネスユースを想定するのであれば一つ答えを出しておかねばならない問題があります。なぜそもそも正確性を重視した日本語入力システムがこれまで存在しなかったのでしょうか。

企業が開発できなかった理由は、iPhoneを日本企業が開発できなかったのに近いと考えています。技術的には可能でもミスが出たら誰が責任を取るのか、導入費用はどうするのかといった正常性バイアスによる反対論に押されて、ずるずると現状維持を続けてしまったのでしょう。

個人が開発できなかった理由はもう少し複雑です。歴史に目を向けなければなりません。最近は主に大岡さんのおかげで変わりつつあるとはいえ、ネット上ではタイピングで最も重要な要素は速さだという考え方が今も主流です。そしてタイプウェルでは速度を競って長い間激しい競争が行われてきました。

ランキング上位を目標に自作配列で挑戦された方もいます。なかでも新下駄配列は作者のkouyさんが成果を上げた配列として評価を上げています。努力を積み重ねた賜物です。またそれでも届かないZランカーの上位勢が、いかに血のにじむような努力を重ねられているかがよく分かると思います。

画像はランキングのミラーサイトにあるkouyさんの記録(国語K)です。
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こうした状況で上位勢への挑戦に対してひるむ人が出るのは想像に難くありません。配列だけでどうこうできる問題ではないと考えるのが自然です。

本来開発者がキーホードを使うのはコーディングの為であり、日本語入力は専門外です。打鍵動画を上げても二言目には遅いと言われるのが関の山です。こんな調子では開発者が減るのも不思議な話ではありません。

こうした背景で速さだけが唯一の基準であるのに疑問を持ちました。くないの原点です。